矢作デマンドを一般質問(女性市議会ツアー)
12月議会が始まりました
私の一般質問の日は
ちょうど「女性市議会ツアー」が開かれていて
傍聴席がとても華やかで
心強い雰囲気の中での登壇となりました
先月には日本のトップに
高市早苗総理大臣が就任されましたが
髪型が少し似ているかもしれないと自分でも思いつつ
「決して狙ったわけではありません」と
議場で少しだけ笑いも起きた一般質問のスタートでした
せっかくいただいたこの機会を
岡崎の未来に生かしていきたい、そんな思いで
矢作地域の公共交通について質問をしました
今回はその内容をお届けしたいと思います

岡崎市が目指す公共交通
まず最初に確認したのは
岡崎市がそもそもどんな公共交通の姿を
目指しているのかということです
市の考え方を一言でいうと
地域の暮らしを支える「生命線」としての交通を
もう一度つくり直していくということ
鉄道を幹
路線バスを枝
コミュニティ交通や予約型の乗合タクシーなどの
デマンド交通を葉に見立てて
それぞれが有機的につながることで
通勤
通学
買い物
通院
こうした日常生活の移動を
車を運転しなくなっても可能にする
という考え方です

青い点線が鉄道駅(木の幹)
上=北野舛塚駅(愛環鉄道)
中=矢作橋駅(名鉄)
下=西岡崎駅(JR)
それを結ぶ赤い線がバス路線です(木の枝)
鉄道駅やバス停の近くは
幹と枝をしっかり太くして支える
その一方で
駅から約800メートル
バス停から約300メートルを超える
いわゆる「交通空白地帯」には
矢作デマンドのようなデマンド交通や
地域で運営する共助交通など
いくつかの手段を組み合わせて移動を確保していきたい
これが今
改訂作業が進められている地域公共交通計画の
大きな方向性です
介護保険のケアマネジャーとして
高齢者の生活や通院の大変さを見てきた立場からすると
「どこに住んでいても、自分で運転しなくても
行きたいときに行きたい場所へ行けるかどうか」
これは暮らしの安心そのものだと感じています
矢作デマンド 3年間の実証で見えてきたもの
では、矢作地域で実証運行を続けてきた
「矢作デマンド」はどうだったのか
矢作デマンドは
電話予約やネット予約で利用する
乗合タクシーです
3年間の実証の中で
利用者数は少しずつ増え
市が負担する一人あたりの金額も
年々下がってきました
一方で
運行を続ける目安として示されている指標のうち
乗合率だけが基準に届いていません
乗合率というのは
一回の運行に何人一緒に乗っているかという数字で
これが低いと
どうしても市の負担が大きくなってしまいます
ただ数字だけを見ると
「効率が悪いからやめましょう」
となってしまいがちですが
利用実態を見ていくと
70代以上の方が利用のほとんどを占めています
その多くが女性で
通院
買い物
まさに日常生活の足として
矢作デマンドを頼りにされている現状があります
会員向けアンケートでは
「午後1時までの運行だと往復で使いづらい」
「通院は終わる時間が読めないから
デマンドだと不安」
そんな声が多く寄せられました
こうした声を受けて
10月からは運行時間を1時間延ばし
午後2時までの運行に変更されました
実際に延長時間帯の利用はまだ多いとは言えませんが
数字の裏側には
「本当はこういう時間に使いたい」
「こういう使い方ができたら助かる」
という生活のリアルがあります
バスは「枝」 デマンドは「葉」 それぞれの役割をどう生かすか
矢作デマンドについて議論するときに
セットで考えなければならないのが
矢作循環線という路線バスの存在です
矢作循環線は
北野桝塚駅、矢作橋駅、西岡崎駅を結ぶ
矢作地域の「幹線」のような路線で
駅と地域を南北につなぐ
とても大事な枝の交通です
この数年で
便数を増やして使いやすくしようとした結果
利用者は増えてきましたが
市の補助金も大きく増え
一人あたりの市負担額も
他の路線と比べて高い水準になってしまいました
一方、地域の皆さんからは
「本数が少なくて使いにくい」
「行きたいところに行けない」
「生活動線とバス路線が合っていない」
そんな声を本当にたくさん聞きます
これは、市が考えている公共交通の「想定」と
実際に暮らしている人たちの「現実の移動ニーズ」に
ズレがあるということ
枝である路線バスが十分に機能していなければ
葉であるデマンド交通だけ充実させても
全体のネットワークとしては完成しません
だからこそ、市と名鉄バスが
お互いのデータを出し合って
どの時間帯に、どのルートで
どんな人が乗っているのか
それを見える化しながら
路線や本数を一緒に組み立て直していくことが大事です
議員研修会でも、名城大学の松本幸真教授から
行政と民間がデータを相互活用して
交通施策に反映させていく必要性が大切だ
というアドバイスをいただきました
矢作地域でもまさにその実践が必要だと感じています
「空きタクシー」の活用という新しい選択肢
今回の一般質問では
矢作デマンドの今後の在り方として
空きタクシーを活用する方法についても提案しました
今の矢作デマンドは運行時間中
タクシー会社の車両をまるごと借り上げていて
動いていてもいなくても
その時間の料金が発生しています
それを、予約が入った時間だけ
タクシーをデマンドとして走らせる
という仕組みに変えることで
待機しているだけの時間のコストを減らし
市が負担する総額を抑えられるのではないか
という考え方です
利用者にとっては、タクシーの空きさえあれば
今より多くの車両が使える可能性がある
タクシー会社にとっては
デマンドの予約がない時間は
通常のタクシー営業ができる
市にとっては、事業費を抑えながら
サービスを続ける道が開ける
一方で、タクシーに空きがない時間は
誰もデマンドを使えない可能性があること
複数の事業者が入ると
予約や運賃のルールをどうそろえるかなど
検討しなければならない課題もあります
同時に、バスとデマンドを乗り継いで使うことへの
心理的なハードルを下げるため
矢作地域内のバスとデマンドが
乗り放題になるパスや
分かりやすい乗継割引なども
今後の検討が必要だと感じています
特に、利用者の多くを占める高齢者の方にとって
シンプルで分かりやすい仕組みであることは
とても大事なポイントです
数字の向こう側にいる一人ひとりの暮らしのために
矢作デマンドは
乗合率という数字だけを見れば
確かに課題があります
けれど、その数字の向こう側には
一人で外出するのが難しくなった方
病院までの足がない方
買い物に行く手段を失いかけた方
そんな一人ひとりの暮らしがあります
だから私は、乗合率が未達成だからやめる
という議論ではなく
一人あたりの市負担額をどう抑えながら
本当に困っている人の移動を守っていくか
そのために
空きタクシーの活用
バスとのデータ連携
フリーパスや乗継割引
こうした選択肢を組み合わせていくことが
必要だと考えています
今後はアンケートだけでなく
実際の利用者の方へのインタビューも行いながら
「交通」という切り口から
岡崎市の抱える課題を見つめていきたい
市議会議員として
そしてケアマネジャーとして
数字と同じくらい
一人ひとりの顔が浮かぶ議論を
これからも続けていきたいと思います
矢作デマンドも矢作循環線も
どちらかを切り捨てる話ではなく
暮らしを支える「幹・枝・葉」を
どう守るかという問いかけだと感じています
数字の効率だけでは語り尽くせない
一人ひとりの移動の物語に
これからも丁寧に耳を傾けていきたいと思います



