愛知県西三河県民事務所 産業労働課主催セミナー登壇
先週、愛知県の西三河県民事務所で開催された
セミナーに登壇させていただきました
主催は産業労働課さんで
「改正育児・介護休業法から考える
仕事と介護の両立支援」
というテーマでお話ししてきました
この日は、リアルとオンラインのハイブリッド開催で
176名の方にお申し込みをいただきました
企業の人事担当者の方を中心に
豊田市やみよし市の企業の方々など
さまざまな立場の方が参加してくださいました
セミナーでは
まず介護休業・介護休暇といった
両立支援制度の概要をお伝えし、その上で
「制度があっても介護離職してしまうのはなぜか?」
という点について深掘りしました
今回は、その一部をブログでも
共有させていただきたいと思います

「産業ケアマネ」って何をする人?
このブログを読んでくださっている方は
「産業ケアマネ」という言葉を
目にしたことがある人が
ほとんどかもしれませんね
産業ケアマネとは
ケアマネージャーを紡ぐ会が創設した資格で
企業内で、従業員やその家族の
介護問題についての
相談や支援を行う専門家です
例えば、学校で体調が悪くなったら
保健室で休んで
回復したら教室に戻るように
職場でも、親や家族の介護について
不安や悩みを抱えてどうしたらいいかわからない…
そんな時に「産業ケアマネ」が
介護の“保健室”のような存在として機能します
介護の課題を整理し
制度の使い方や支援の選択肢を一緒に考え
また元気に職場へ戻っていけるよう伴走していく
そういった立ち位置で
今回も産業ケアマネとして
登壇させていただきました
制度があるのに離職する理由とは?
今回のセミナーには
制度のことを初めて聞いたという方もいれば
社内でかなり整備が進んでいるという方まで
いろんなレベル感の方がいらっしゃいました
その中で特にお伝えしたかったのが
「制度があるのに、なぜ利用されないまま
介護離職する人が多いのか」という点です
実は、こんなデータがあるんです
2024年4月20日付の
朝日新聞オンラインによると
「介護離職した人の半数以上が
制度を利用しないまま退職している」
という調査結果が報告されています
このデータは
東京商工リサーチが5,570社
(うち大企業423社、中小企業5,147社)
から得た有効回答をもとにしたもので
非常に信頼性の高いものだと感じています
制度が使えない“5つの壁”
じゃあ、なぜ制度が使われないのか
私なりに考えてみたところ
「5つの壁」があることに気づきました
1.雰囲気の壁
制度を使うと評価が下がるかもしれない
周囲に迷惑をかけるかも…といった社内の空気感
2.情報の壁
制度の存在を知らない
聞いたことはあっても内容や使い方がわからない
3.タイミングの壁
介護の初期段階で相談できず
ギリギリになってから相談に来て
「辞めるしかない」となるケースが多い
4.社内体制の壁
誰に相談すればいいのかが曖昧
人事に相談しても制度の説明だけで
実際の使い方まではわからない
5.心理的な壁(プライドの壁)
親の介護や家庭の事情を
会社に知られたくないという
心理的なハードル
この5つの壁のうち、特に注目したいのが
「雰囲気の壁」と「情報の壁」なんです
この2つは、従業員さんであれば
誰もが直面するものですが
逆に言えば、会社側の努力や環境づくりで
改善できる余地がある壁でもあると思います
初動対応と“介護リテラシー”の重要性
両立支援で大事なのは“初動”です
つまり、介護が本格化する前の段階で
どれだけ気づき、準備し
相談できるかがカギなんです
そのためには、従業員の
「介護リテラシー(介護に関する知識や情報)」を
高めていく必要があります
じゃあ、そのために何ができるかというと
大きく2つ
✓ 職場での介護教育
✓ 個別相談窓口の設置
この2つをしっかり整えることで
会社は介護離職をぐっと減らすことができます
「仕事を続けてもらいたい企業」と
「辞めたくないけれど介護がある従業員」
その両者をつなぐ“橋渡し役”として
産業ケアマネが大きな役割を
果たすことができるんです
事例紹介と、企業の反応
セミナーでは、具体的な支援事例もお話しました
たとえば、一人っ子で遠距離介護の方が抱える
不安にどう寄り添ったか
あるいは、子育てと介護のダブルケアを抱える
40代女性の方への支援の流れなど
産業ケアマネがどのようにサポートし
会社とどのように連携して対応していくかを
実例を交えてご紹介しました
セミナー後には
なんと質疑応答が30分も続きました
それだけ企業の皆さんが
このテーマに強い関心と課題意識を
持ってくださっていたのだと思います
ちなみに、今回のセミナーは
一般社団法人「両立の産業ケアマネ」所属の
金原洋子さんと私の2人で担当しました
金原さんのパートではロールプレイングも行い
理解を深めるための工夫も
たくさん盛り込まれていました
さいごに
今回は1時間という限られた時間の中で
ほんの一部のお話しかできませんでしたが
企業の中に“見えない介護リスク”が
確実に存在すること
それに気づいて動けるかどうかが
これからの人材確保にもつながると感じています
最後になりましたが、今回のセミナー開催にあたり
ご多用の中ご尽力いただいた
西三河県民事務所の天野さんと加藤さんには
心より御礼申し上げます
地域を支える皆さんとの連携が
このようなあたたかい場づくりに繋がっています
今後もご依頼があれば
セミナーやオンライン開催など
どこへでもお伺いします
今回のように「まず知ることから始めたい」
と思った企業さんがいらっしゃれば
ぜひお気軽にご相談いただければうれしいです
